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データセットの著作権、データベースの著作権、AIモデルのライセンスについてのざっくりしたまとめ

はじめに

 

本稿は巻末の参考URLや生成AIとの壁打ちを元に、私自身が理解するためにざっくりまとめた所感です。

法的な解釈や事業への適用の際には、ご自身や法務を担当する部署へ確認をお願いします。

無理やりな解釈をして「使える!」という判断をせず、"君子危うきに近寄らず"です。 あくまでも法的な解釈に業務の判断を委ねない(ライセンス条件の波及リスクのない)安全な選択をするための考え方としてお読みください。

※今回の結論はコンプライアンス上のリスクのないクリーンな主張となっています。

 

 

権利、ライセンスの話はややこしい

 

近年、AIの社会実装が進むにつれ、データセットやモデルの権利、ライセンスについての話題が多く聞こえるようになってきました。
これは、AIを誰でも使えるようになってきたことや、データセットが重要であると理解されていること、AIの適用が広がり、検証や市場獲得のフェーズからマネタイズに移行してきていることと連動していると考えます。
個人が撮影したスマホ画像や動画が流通するものの、プライバシーや著作権の問題が放置されてきていることへの揺り戻しの面もあるかもしれません。
著作権で保護されるものは、個人の思想、感情、創作であり、私たちが取り扱おうとしている、インフラ、構造物、設備の動画や写真は少し趣が違いますが、それでも素材データの著作権、データベース著作権、派生利用権、モデルの著作権などの問題には無関係ではありません。
また、AIの業務適用を考えている私たちにとって、AIを作成するソフトウェア、モデルを活用するソフトウェア、モデル自体のライセンスは、直接的にコストや長期の事業継続に影響します。

そこで、本稿では、「法的にどのような解釈が正しいのか?」ではなく、"どのような選択をすることがベターか"を判断することを目標にします。

※法的に何が正しいかをジャッジするのは弁護士や裁判所です。

 

 

チェックシート

項目 確認項目 安全な方法
画像素材 著作権、肖像権 自前で準備
データセット(クラス、アノテーション) データベース著作権 自前で準備
フレームワーク、ツール ソフトウェアライセンス apache2、MITライセンス
pre-trainedモデル 著作権の派生、ソフトウェアライセンス、配布ライセンス apache2、MITライセンス
生成されたモデル 著作権の派生、ソフトウェアライセンス、配布ライセンス apache2,MITライセンス
プログラムが使用するライブラリ 著作権の派生、ソフトウェアライセンス、配布ライセンス apache2,MITライセンス

 

 

都合の良いデータセットがない問題

  • 自分達の業務(ドメイン)に特化したデータセット、モデルが無い。
  • 業界で定義した標準がない。
  • 異常を記録した画像が存在しないか少なすぎる
  • 画像があっても解像度が低い、サイズがバラバラ

 

画像の著作権問題

  • 作成者(撮影者)に著作権がある(業務委託の場合は著作権を譲る)
  • 著作物:思想または感情を創作、表現したもの。≒施設設備の撮影は表現ではないか
  • ※ネットからクロールまたはデータセットをダウンロードする場合は、個々の著作権や規約の確認が必要
  • ※日本の著作権法では、一定の条件のもとでAIによる情報解析・機械学習のための利用が認められる場合がある(サーバのリージョン、規約、提供元の著作権に注意)

 

データベースの著作権

  • データ素材の選択、配列情報の選択、体系的な構成に創作性がある場合に著作物として保護する
  • データベース:フォルダ分け、選定、クラス化、ラベル付与、アノテーション付与


特に私たちがノウハウと認める

  • どの画像を採用するか
  • 何を異常と定義するか
  • クラスをどう設計するか
  • どの範囲をbboxにするか
  • どういう体系でデータセット化するか

という人間側の判断・体系設計に創作性があるか?は重要です。

 

モデルの著作権

  • モデルの重み自体について著作物性が当然に認められるとは限らない。
  • 一方、モデル提供者のライセンス条件や、モデル生成に使用したソフトウェアとの関係は別途検討が必要

 

データセットがオープンでも商用では使えない問題


CC-BY-NC-SAなどのライセンスでは、商用利用禁止、非営利継承義務などが付いていて商用で使えない、モデルに権利が派生する。

 

仮にオープンデータセットがあっても商用利用に制限がある


有償で購入できるようだが自分達の用途で効果が出るかどうかはわからない

 

AGPL3が過激すぎる問題

  • プロジェクト、ソースコード、モデルの公開義務
  • AGPLでSaaSとして提供する場合、一定のソース提供義務が発生する
  • ツール、モデル(後述)にAGPL3ライセンスが適用されていて使えない

 

weightファイルまで権利が派生する問題

  • 法務的には解釈が分かれるものの、ultralytics社の解釈ではモデルにも権利が継承されるとの立場
  • ※法で争う方法はあるものの、コンプライアンス重視の立場では従わざるを得ない

 

 

結論1:(法務的なリスクを避け、他社サービスへのキャッシュアウトを避けるならば)あえて茨の道を歩め
  • データセットを自前で用意する ⇒ 著作権を保持
  • アノテーションを自前で作成する⇒データベース著作権を保持
  • apache2ライセンスのpre-trainedモデルor独自モデルを使用する⇒派生権の確保

 

結論2:エンタープライズライセンスを契約する
  • データセットを購入する
  • pre-trainedモデルを購入する、または他社からモデルを購入、契約する
  • クラウドサービス、ツール提供、サポート、配布ライセンスが付随するエンタープライズライセンスを契約する

 

 

補足:

 

・画像の著作権

施設設備の写真は、一般に「創作性が乏しい」と判断されることが多いものの、 撮影者の構図・光・角度などの選択が反映されるため、 著作権が成立する可能性は十分にある。 よって、素材として利用する場合は撮影者の権利処理が必要。 

 

・データベース著作権

データベース著作権は「素材そのもの」ではなく、 選択・配列・体系化の創作性 に対して発生する。 そのため、

  • クラス分け
  • アノテーション
  • ラベル付与 は著作権の対象となり得る。

 

・モデルの著作権

モデルの重み(weights)は統計処理の結果であり、 著作権法上の著作物とは扱われない。 しかし、モデル提供者が設定する 利用規約・ライセンス契約には従う必要がある。 ここが著作権とライセンスの大きな違い。

 

・CC-BY-NC-SA

  • NC(非営利) → 商用利用不可
  • SA(継承) → 派生物も同じライセンスで公開義務 があるため、 商用AIモデルの学習には原則使えない。

 

・AGPL の危険性

AGPL は「ネットワーク越しの利用も配布とみなす」ため、 SaaS・API・クラウド提供と極めて相性が悪い。

 

・Ultralytics の解釈

Ultralytics は「学習済みモデルにもライセンスが継承される」という立場を取っている。 法的には議論の余地があるものの、 企業コンプライアンスとしては提供者の解釈に従うのが安全。

 

 

参考URL

 

https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/h30_hokaisei/
https://qiita.com/yuta_aoki_ai/items/907d24d0dd4a2c3dc2b8
https://www.itmedia.co.jp/news/article/1710/10/1171010040/
https://storialaw.jp/blog/2761
https://note.com/soyokaze2/n/n50b1e406bec9
https://anything.fromation.co.jp/archives/33579
https://micomia.com/tech_blog/yolo_license
https://note.com/kabo_dev_memo/n/n9ec49770789a

 

 

▼この記事を書いたひと

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R&Dセンター 松井 良行

R&Dセンター 技術戦略担当部長。コンピュータと共に35年。そしてこれからも!

 

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